Glossary
ロボット用語集
導入の検討でも開発でも、最初につまずくのは言葉です。66 語を、 定義だけでなく「実務で何が問題になるか」まで含めて説明します。
種類
- AMRAutonomous Mobile Robot
自律走行搬送ロボット。レーザースキャナやカメラで周囲を測りながら自分で地図を作り、経路を決めて走る。人や台車が道をふさいでいれば迂回できる。
実務では床面工事が不要で経路変更が容易な反面、本体価格はAGVより高い傾向がある。
- AGVAutomated Guided Vehicle
無人搬送車。床に敷いた磁気テープや誘導線などの外部ガイドをたどって、決められた経路を走る。
実務では障害物があると停止して待つのが基本動作。動線が固定された大量搬送では、単純さと安さが利点になる。
関連:AMR
- 協働ロボットCollaborative robot / Cobot
安全柵で人と隔離せず、同じ空間で作業させることを想定して設計された産業用ロボット。接触時の力を抑える機構や、人の接近を検知して減速する機能を持つ。
実務では「協働ロボットだから柵が不要」ではない。柵なしで運用できるかは、エンドエフェクタやワークまで含めたシステム全体のリスクアセスメントで決まる。
- 産業用ロボットIndustrial robot
工場で溶接、塗装、搬送、組立などを行う自動機械。日本の労働安全衛生規則では、可動範囲内で作業する場合に柵や囲いを設けることが原則として求められる。
- 垂直多関節ロボットVertical articulated robot
人の腕のように複数の関節をつないだロボット。6軸が一般的で、姿勢の自由度が高く、複雑な向きでの作業に対応できる。産業用ロボットの主流。
- セミヒューマノイドSemi-humanoid
上半身は人型で、下半身が車輪の台車になっているロボット。二足歩行より安定していて安価なため、当面の実用機はこの形態が中心になると見られている。
関連:ヒューマノイド
- 直交ロボットCartesian / Gantry robot
X・Y・Zの直線軸を組み合わせたロボット。動きが単純で位置決めしやすく、大きな作業範囲を安価に確保できる。ガントリーローダとも呼ばれる。
関連:垂直多関節ロボット
- パラレルリンクロボットParallel link / Delta robot
複数のアームが1つの手先を支える構造のロボット。可動部が軽く高速に動けるため、食品や医薬品の高速ピッキングに使われる。デルタロボットとも呼ばれる。
関連:スカラロボット
- ヒューマノイドHumanoid robot
人の形を模したロボット。人向けに作られた環境や道具をそのまま使えることが設計上の狙いで、専用設備を組まずに済む点が期待されている。
実務では2026年時点では倉庫・研究所など管理された環境での実証が中心。
スペック
- 可搬重量Payload
ロボットが手先で持てる最大の重さ。
実務ではエンドエフェクタの重さを含む点に注意。3kgのグリッパを付けた可搬5kgのロボットが扱えるワークは2kgまで。カタログ値ぎりぎりでは加減速も鈍るため、余裕を見て選ぶ。
- 繰り返し位置決め精度Repeatability
同じ指令を繰り返したとき、手先が同じ位置に戻る精度。±0.02mmのように表記される。
実務ではカタログで目立つのはこの値だが、これは「同じところに戻れる」精度であって「指定した座標へ正確に行ける」精度ではない。後者は絶対精度で、通常もっと悪い。
関連:絶対精度
- サイクルタイムCycle time
1つの作業を終えて次の作業を始められるまでの時間。生産能力を決める最重要指標。
実務ではカタログの最高速度から計算した値と実機の値は乖離する。加減速、待ち、ハンドの開閉時間が積み上がるため、実測かシミュレーションで確認する。
関連:デジタルツイン
- 自由度Degrees of Freedom / DOF
独立して動かせる軸の数。空間内で任意の位置と姿勢をとるには6軸が必要で、7軸あると障害物を避けながら同じ位置に到達する経路を選べる。
- 絶対精度Absolute accuracy
指令した座標と、実際に手先が到達した座標のずれ。繰り返し精度より一桁悪いことが多く、CADデータから直接動かすオフラインティーチングではこちらが効いてくる。
- 定格出力Rated output
モータの定格出力。日本の労働安全衛生規則では、駆動用原動機の定格出力が80Wを超えるものが産業用ロボットの定義に含まれる。
実務では80W以下なら規制対象外という理解は危険。定義から外れても事業者の安全配慮義務は残り、先端に危険な工具が付いていれば人は怪我をする。
- 保護等級IP rating
粉じんと水に対する保護の度合いをIP+2桁で表す規格。1桁目が粉じん、2桁目が水。IP67なら防塵完全かつ一時的な水没に耐える。
実務では食品工場や切削油の飛ぶ工程では、この等級で候補が絞られる。
ハードウェア
- エンドエフェクタEnd effector
ロボットの手先に取り付ける作業装置の総称。グリッパ、吸着パッド、溶接トーチ、塗装ガン、カメラなど。
実務ではリスクアセスメントの対象はアーム本体だけではない。鋭利な爪や把持力の強いグリッパはそれ自体が危険源になる。
- グリッパGripper
ワークをつかむエンドエフェクタ。爪で挟む平行グリッパ、真空で吸い付ける吸着パッド、袋状の膜で包むソフトグリッパなどがある。
実務では扱うワークの形・重さ・表面状態で選ぶ。ロボット選定より先にグリッパが決まることも多い。
- 3Dビジョン3D vision
対象物の三次元形状を取得するカメラ。ばら積みされた部品の中から1つを選んで掴む「バラ積みピッキング」に欠かせない。
実務では金属の光沢や黒い樹脂は苦手な方式が多く、事前のワーク検証が要る。
関連:バラ積みピッキング
- 波動歯車装置Strain wave gearing / Harmonic drive
薄い金属カップの弾性変形を使って大きな減速比を得る歯車。バックラッシュがほとんどなく小型軽量なため、ロボット関節の減速機として広く使われる。
関連:サーボモータ
- LiDARLiDAR
レーザーを照射して反射までの時間から距離を測るセンサ。AMRの自己位置推定と障害物検知の中核を担う。
実務では鏡面やグレーチング、透明な仕切りは反射が返らず、自己位置を見失う原因になる。
制御・ソフトウェア
- オフラインティーチングOffline teaching / programming
実機を止めずに、PC上の3Dモデルで動作プログラムを作る方式。生産を止める時間を減らせる。
実務ではCAD上の座標と実機の座標のずれ(絶対精度)を補正するキャリブレーションが必要になる。
- 強化学習Reinforcement learning
試行錯誤の結果に報酬を与えて、報酬が最大になる行動を学習させる手法。歩行制御など、正解の動作を人が書き下しにくい問題で使われる。
実務では実機で試行錯誤すると壊れるため、シミュレータで学習して実機へ移すのが一般的。
- 経路計画Path planning
現在位置から目的地まで、障害物にぶつからない経路を計算すること。アームの場合は関節角の空間で衝突しない軌道を探す。
- 自己位置推定Localization
既知の地図の中で、自分がいまどこにいるかを求めること。センサで測った周囲の形状を地図と照合する。
実務では倉庫のように似た景色が続く場所や、荷物で景色が日々変わる場所では推定が不安定になりやすい。
関連:SLAM
- Sim2RealSim-to-Real
シミュレータで学習させた制御を実機へ移すこと。摩擦や遅延など、シミュレータと現実のずれ(realityギャップ)をどう埋めるかが課題になる。
- SLAMSimultaneous Localization and Mapping
地図を作りながら、同時にその地図上での自分の位置を推定する技術。AMRが床にガイドを敷かずに走れるのはこれによる。
- ダイレクトティーチングDirect teaching / Hand guiding
人がアームを手で掴んで動かし、その姿勢を記録させる方式。協働ロボットの多くが対応する。プログラミングの知識がなくても始められる。
- ティーチングTeaching
ロボットに動作を教える作業。位置と姿勢、速度、ハンドの開閉タイミングを順に登録していく。
実務では導入工数の大半はここに消える。段取り替えの多い現場ほど、ティーチングのしやすさが機種選定の決定打になる。
- ティーチングペンダントTeaching pendant
ロボットを手動操作し動作を登録する携帯操作器。非常停止ボタンとイネーブルスイッチを備える。
関連:ティーチング
- デジタルツインDigital twin
実際の設備をPC上に再現したモデル。導入前のサイクルタイム検証、干渉チェック、オフラインティーチングに使う。
- VLAモデルVision-Language-Action model
カメラ画像と言語指示を入力し、ロボットの動作を直接出力するモデル。「赤い箱を棚に置いて」のような指示から動作を生成することを目指す。
実務では汎用性は高いが、産業用途で求められる再現性・サイクルタイム・安全保証の水準にはまだ届いていない。
- フィジカルAIPhysical AI
現実世界で物体を認識し、動かし、結果から学ぶAIを指す言葉。画面の中で完結する生成AIと対比して使われる。
実務では明確な技術的定義がある用語ではなく、業界で広く使われるマーケティング寄りの言葉でもある。
- 模倣学習Imitation learning
人がやってみせた動作のデータから、ロボットの制御方策を学習させる手法。報酬設計が難しいタスクでも、実演さえ集められれば学習できる。
- ROS / ROS 2Robot Operating System
ロボット開発のためのオープンソースのミドルウェア。センサ、制御、経路計画などの機能を独立したプロセスとして動かし、メッセージでつなぐ。OSではなくフレームワーク。
実務ではROS 2は通信基盤をDDSに置き換え、リアルタイム性とセキュリティを改善したもの。研究から産業応用への橋渡しを担う。
安全・規格
- ISO 10218ISO 10218
産業用ロボットの安全要求事項を定めた国際規格。-1がロボット本体、-2がロボットシステムと統合を対象とする。
実務では日本では、この規格に適合しリスクアセスメントで危険のおそれがなくなったと評価できる場合に、柵なしでの運用が認められている。
- ISO/TS 15066ISO/TS 15066
協働ロボットシステムの技術仕様書。人体の部位ごとに、接触時に許容される圧力と力の値を示している。
実務では規格(standard)ではなく技術仕様書(technical specification)で、ISO 10218を補足する位置づけ。
- 安全柵・ライトカーテンSafety fence / Light curtain
人がロボットの可動範囲に入るのを物理的に防ぐ柵と、光線の遮断で侵入を検知して停止させる装置。エリアセンサで床面の領域を監視する方式もある。
- 機能安全Functional safety / PL / SIL
安全機能そのものが故障したときにも危険側に倒れないよう設計する考え方。ISO 13849のPL(パフォーマンスレベル)やIEC 62061のSILで水準を表す。
- 速度・間隔監視Speed and Separation Monitoring / SSM
人とロボットの距離をセンサで監視し、近づくほど減速、一定距離で停止させる協働運転の方式。距離が保てる作業では、力を制限するより生産性を落とさずに済む。
- 力・圧力制限Power and Force Limiting / PFL
人に接触しても危害に至らない範囲まで、ロボットの力と圧力を制限する協働運転の方式。ISO/TS 15066の閾値を下回るよう設計・実測する。
- リスクアセスメントRisk assessment
危険源を洗い出し、危害の大きさと発生確率を見積もり、必要な保護方策を決める一連の手続き。実施結果は文書として残す。
実務では協働ロボットを柵なしで運用する根拠はこれ。構成を変えたらやり直しになる。費用と時間を導入予算に最初から入れておく。
- 労働安全衛生規則 第150条の4Article 150-4
産業用ロボットの可動範囲内で作業を行う場合、接触による危険を防ぐため柵や囲いを設けるなどの措置を事業者に義務づける条文。
実務では厚生労働省の通達により、ISO 10218-1/-2に適合しリスクアセスメントで危険がないと評価できる場合の例外が示されている。個別の適法性判断は所轄の労働基準監督署に確認すること。
導入・運用
- SIerSystem Integrator
ロボット本体に周辺機器を組み合わせ、実際に動くシステムとして仕立てる事業者。ティーチング、安全評価、既存設備との接続を担う。
実務ではメーカーが売るのはアームまで。現場で動くまでの距離を埋めるのがSIerで、導入の成否は機種選定よりSIer選定で決まることが多い。
- システム価格System cost
ロボットを実際に稼働させるまでにかかる総額。本体、エンドエフェクタ、架台、安全装置、安全評価、ティーチング、周辺設備、据付を含む。
実務では本体価格の2〜3倍になることが珍しくない。見積もりを比べるときは、どこまでが含まれた金額かを必ず揃える。
- WMSWarehouse Management System
倉庫の在庫と作業を管理するシステム。搬送ロボットに指示を出す上位システムとして接続することが多い。
実務ではAPI連携の開発を誰がやるかを契約前に決めておかないと、機体は届いたのに運用が始まらない状態になる。
- 段取り替えChangeover / Setup change
生産する品種を切り替えるために、治具やプログラムを入れ替える作業。
実務では多品種少量の現場では、この頻度がロボット導入の可否を左右する。切り替えのたびに専門家のティーチングが要る構成では回らない。
- 投資回収期間Payback period / ROI
導入費用を、削減できた費用や増えた生産量で回収するのにかかる期間。ロボット導入の稟議で最も問われる数字。
実務では人件費の削減だけで計算すると回収が遠く見える。歩行時間、不良率、夜間稼働、採用難のリスクも含めて評価する。
- フリートマネジメントFleet management
複数台のAMRを一括で管理し、走行の割り当てや交通整理、充電の順番を制御する仕組み。
実務では台数を増やすときに必ず必要になる。ライセンスが年額の場合があるため、総額の試算に含める。
関連:AMR
- 補助金Subsidy
設備投資の一部を国や自治体が補助する制度。ものづくり補助金や省力化投資補助金などがロボット導入の対象になり得る。
実務では公募時期・要件・補助率は年度ごとに変わる。必ず最新の公募要領を確認し、SIerが申請支援に対応するかも見積もり時に聞いておく。
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