「協働ロボットって 400 万円くらいですよね」という話から始まって、SIer の見積もりが 1,200 万円で出てくる。ロボット導入でよくある展開です。
どちらも嘘ではありません。400 万円はアーム単体の価格で、1,200 万円は現場で動くまでの価格だからです。この差がどこから来るのかを分解します。
費用の内訳
典型的な構成では、おおむね次のようになります。比率は用途で変わりますが、桁感の目安として使えます。
| 項目 | 全体に占める割合の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| ロボット本体 | 30〜40% | アームとコントローラ |
| エンドエフェクタ | 10〜20% | グリッパ、吸着ユニット、真空ポンプ、ツールチェンジャ |
| 治具・架台 | 10〜20% | ワークの位置決め治具、ロボットを載せる架台 |
| 安全装置 | 5〜15% | 柵、ライトカーテン、エリアセンサ、非常停止回路 |
| 周辺設備 | 5〜20% | コンベア、供給装置、既存設備の改造 |
| エンジニアリング | 15〜30% | 設計、ティーチング、試運転、リスクアセスメント |
| 据付・輸送 | 3〜5% | 搬入、設置、電源工事 |
本体価格の 2〜3 倍というのは、ここから出てくる数字です。
なぜエンジニアリング費が大きいのか
見積もりを見て一番驚かれるのがこの項目です。「プログラムを書くだけでは」と思われがちですが、実際に含まれるのは次のような作業です。
- 現場調査と、動作が成立するかの検討
- ロボットとグリッパの選定、干渉チェック
- 治具の設計と製作図
- 電気設計(安全回路を含む)
- ティーチングと動作確認
- リスクアセスメントと文書化
- 立ち会い試運転、現場作業者への教育
特にリスクアセスメントは、協働ロボットを柵なしで運用する場合の法的な根拠になる手続きです。省略できません。詳しくは協働ロボットは本当に安全柵なしで置けるのかにまとめました。
見積もりを比較するときに揃えること
複数の SIer から見積もりを取ると、金額が倍近く違うことがあります。多くの場合、安いほうが何かを含んでいません。
比較する前に、次を全社に同じ条件で提示してください。
- 扱うワークの仕様。 重さ、寸法、材質、表面状態、温度。品種が複数あるなら全部。
- 要求サイクルタイム。 「1 分あたり ○ 個」。
- 稼働条件。 1 日何時間、何直、年間何日。
- 設置環境。 電源、床、周囲のスペース、切削油や粉じんの有無。
- 人がどこまで近づくか。 これで安全方策の要否が決まります。
- 既存設備との接続。 工作機械、コンベア、上位システム。
そのうえで、見積書に次が含まれているかを一項目ずつ確認します。
- リスクアセスメントの実施
- 治具の製作
- 現場作業者への教育
- 立ち会い試運転
- 保証期間と、その後の保守費用
見落とされやすい継続費用
初期費用だけで判断すると、後から効いてくるものがあります。
- 保守契約。 年額で本体価格の 5〜10% 程度が目安。
- 消耗品。 グリッパのパッド、ケーブル、電池。
- ソフトウェアライセンス。 群制御やビジョンソフトが年額の場合があります。
- 予備品。 止まると生産が止まる工程では、主要部品の在庫を持つ判断が要ります。
- 将来の変更費用。 品種を追加したときのティーチング。自社でできるか、都度依頼かで大きく変わります。
最後の項目は特に重要です。変更を自社でできる構成かどうかが、3 年後のコストを決めます。
費用を下げる現実的な方法
- 工程を単純にする。 ワークの向きを揃える、工程の数を減らす。ロボットに合わせて工程を設計し直すと、必要な機能が減ります。
- 治具を共通化する。 品種ごとの専用治具を減らせば、製作費も段取り替えの手間も減ります。
- 安全方策を先に検討する。 柵ありで成立するなら、そのほうが安く速いことがあります。柵なしありきで進めない。
- 補助金を使う。 制度と要件は年度ごとに変わるため、補助金の見方を参照してください。
- 段階的に入れる。 1 工程で成立させてから広げる。最初から全ラインを設計すると、失敗したときの損失が大きくなります。
まとめ
ロボット本体の価格は、システム価格の 3 分の 1 程度です。検討の初期に本体価格で予算を立てると、必ず足りなくなります。
概算の当たりをつけるなら、本体価格 × 2.5 を出発点に置き、そこから用途に応じて調整するのが実務的です。