ロボットの導入費用のうち、エンジニアリング費が 15〜30% を占めると書きました。その中で最も大きいのがティーチングです。
そして導入後も、品種が増えるたびにこの作業が発生します。方式の選択は、初期費用より運用コストに効いてきます。
4つの方式
ティーチングペンダントによる教示
携帯操作器でロボットを手動で動かし、位置を1点ずつ登録していく従来からの方式です。
細かい制御ができ、条件分岐や信号待ちを含む複雑なプログラムが組めます。一方で、操作に習熟が要ります。産業用ロボットの教示作業には、労働安全衛生法にもとづく特別教育の受講が必要です。
複雑な動作が要る工程や、専任者を置ける現場に向きます。
ダイレクトティーチング
アームを手で掴んで動かし、その姿勢を記録させます。協働ロボットの多くが対応します。
溶接の腕を持つ職人が、そのまま溶接線をなぞって教えられるのが最大の価値です。プログラミングの知識がなくても始められ、立ち上げが速い。
弱点は精度と再現性です。手で置いた位置は微妙にばらつくため、そのままでは高精度な作業に使えません。実務では、大まかな軌跡をダイレクトティーチングで入れ、要所を数値で微調整する併用が多いです。
アイコン・GUI 方式
タブレット上でブロックやアイコンを並べてプログラムを組みます。「移動」「掴む」「離す」といった単位で構成でき、ロボット言語を覚えなくて済みます。
多くの協働ロボットが採用しています。現場の作業者が自分で品種を追加できる構成を作りやすいのが利点です。
複雑な条件分岐や、外部機器との細かい同期が要る用途では表現力が足りなくなることがあります。
オフラインティーチング
PC 上の 3D モデルで動作を作り、実機に転送します。生産を止めずにプログラムを作れるのが最大の利点で、稼働率の高いラインでは決定的です。干渉チェックとサイクルタイムの検証も事前にできます。
課題は、CAD 上の座標と実機の座標のずれです。絶対精度は繰り返し精度より一桁悪いため、キャリブレーションが要ります。ソフトのライセンス費用と、扱える人材の確保も検討事項になります。
多品種少量の現場で決めるべきこと
品種が頻繁に変わる現場では、この問いに先に答えてください。
新しい品種が入ったとき、現場の作業者だけで立ち上げられるか。
「できない」構成、つまり毎回 SIer を呼ぶ必要がある構成にしてしまうと、変更のたびに費用と待ち時間が発生します。多品種少量ほど、この積み重ねが効きます。
自社で回すには、次のどれかが要ります。
- アイコン方式 + 品種ごとのプログラム保存。 画面から選ぶだけで切り替わる。
- 治具の共通化。 ワークの位置決めを揃えて、教える位置を減らす。
- パラメータ化。 寸法だけを変数にして、同じプログラムで対応する。
- 社内に教示できる人を育てる。 特別教育を受けさせ、担当を決める。
いずれも、導入時の設計で決まります。動き出してからでは変えにくい部分です。
センシングで教える点を減らす
ワークの位置が毎回ずれる場合、教えた軌跡だけでは対応できません。補正の手段があります。
- ビジョンによる位置補正 — カメラでワークの位置を検出し、教示点をずらす。
- タッチセンシング — 溶接ワイヤなどをワークに接触させて位置を検出する。
- 力制御による倣い — 押しつけながら形状に沿って動く。嵌合や研磨で使う。
いずれも追加費用がかかりますが、治具の精度を上げるより安く済むことがあります。治具にお金をかけるか、センシングにかけるかは、品種数と生産量で判断します。
検討時に確認すること
デモや商談では、次を実際に見せてもらってください。
- 新しい品種を追加する操作を、最初から最後まで
- そこにかかる時間
- 誰ができる作業か(専門知識が要るか)
- 既存プログラムのバックアップと復元の方法
- 複数台を運用するとき、プログラムを配布する仕組み
カタログには載らない部分ですが、3 年後のコストはここで決まります。