構内搬送の自動化を調べ始めると、AGV と AMR という言葉が並んで出てきます。どちらも「無人で物を運ぶ車」ですが、選定の判断軸はかなり違います。
一言でいうと
AGV(Automated Guided Vehicle) は、床に敷いた磁気テープや誘導線、あるいは天井の反射板といった 外部のガイドをたどって 走ります。決められた道の上を、決められた順に動きます。
AMR(Autonomous Mobile Robot) は、レーザースキャナやカメラで周囲を測りながら 自分で地図を作り、自分で経路を決めて 走ります。人や台車が道をふさいでいれば、避けて回り込みます。
何が実務で効いてくるか
| AGV | AMR | |
|---|---|---|
| 走行の基準 | 床のテープ・誘導線など | 自己位置推定(SLAM) |
| 導入時の工事 | 床面工事が必要 | ほぼ不要 |
| 経路の変更 | テープの貼り替え | 地図上で設定を変更 |
| 障害物 | 停止して待つのが基本 | 迂回できる |
| 本体価格 | 相対的に安い傾向 | 相対的に高い傾向 |
| 向く現場 | 動線が固定されている大量搬送 | レイアウトが変わる、人と混在する現場 |
本体価格だけを比べると AGV が有利に見えることが多いのですが、比較すべきは 総額 です。床面工事の費用、工事中にラインを止める損失、そして数か月後にレイアウトを変えたくなったときの再工事。この三つを足すと、順序が入れ替わることがあります。
逆に、動線が何年も変わらず、同じ経路を大量に往復するだけの現場であれば、AGV の単純さと安さは正しい選択です。「新しいほうがよい」という話ではありません。
判断のための質問
見積もりを取る前に、自分の現場について答えておくとよい質問です。
- 通路に人や手押し台車は入ってくるか。 入ってくるなら、停止して待つだけの AGV は流量を落とします。
- 今後 3 年でレイアウトを変える予定はあるか。 あるなら、床工事の再実施コストを見込む必要があります。
- 通路幅と段差はどうか。 カタログ上の最小通路幅は、実際にはすれ違いや待避を考えるともう少し必要になります。段差やスロープの許容値は機種差が大きい項目です。
- 上位システムと繋ぐか。 WMS や生産管理と連携させるなら、API の有無と、その開発を誰がやるのかを先に決めておきます。ここが後回しになると導入が長引きます。
- 何台に増やす想定か。 複数台を同時に走らせるなら、フリートマネージャ(群制御)の機能と追加費用を確認します。
現場でよく詰まるところ
自動化そのものより、周辺の運用で止まることが多いです。
エレベーター連携。 複数フロアで使うなら、ロボットがエレベーターを呼んで乗り降りする仕組みが要ります。既存のエレベーターに後付けできるかはメーカーと機種次第で、改修費が大きく効くことがあります。
荷役の自動化。 ロボットが目的地に着いても、人が荷物を載せ降ろしするなら、削減できたのは歩行時間だけです。コンベアやリフターと組み合わせて初めて効果が出る場合があります。
充電の運用。 稼働率を上げるには自動充電が前提になりますが、充電ステーションの設置場所と台数は、運用が始まってから足りないことに気づきがちです。